退職時のマナー。
退職を決意したら、まずは直属の上司に退職の意向を伝えましょう。そして、上司と相談して退職日や引き継ぎに関して決定していきます。
なお、この時点ではまだ上司以外の人に退職を伝えるのは避けるべきです。
退職日などの詳細が決まれば、後任への引き継ぎや取引先への挨拶回り、残務処理をこなします。
退職日までに確実に引き継ぎが完了するよう計画的に進めなければなりません。
退職の挨拶は、退職日1~2週間前に社外へ、当日~2日前に社内へおこなうのが一般的ですが、詳細な時期は上司と相談しておくと安心でしょう。
退職の挨拶には守るべき基本的なマナーがあります。
退職を決めて数ヵ月後に会社を去るとしても、ネガティブな発言は避けましょう。
退職に至った経緯はさまざまあるにせよ、会社に対する不満や上司、同僚に対する陰口のようなことを人に言うべきではありません。
不要な誤解やトラブルを避けるためにも、明確な退職理由は話さないようにしましょう。
よく使われる「一身上の都合」と伝えれば問題ありません。
挨拶の際は、必ず御礼の言葉を添えるようにしましょう。
退職理由によってはネガティブな感情を抱いているかもしれませんが、今までお世話になった会社や仲間、取引先であることに変わりはありません。
対面、電話、メールのいずれの挨拶の場合でも、退職日の報告を忘れないようにしましょう。
「○月○日付で退職することになりました」と明確に伝えます。
退職の挨拶は、どういったケースで伝えるかによって気をつけるべきポイントが異なります。
スピーチ、メール、手紙の3つのケースについてポイントを挙げていきます。
スピーチで社内に退職の挨拶をする際は以下の2点に気をつけましょう。
長々と話さず簡潔に スピーチでは長々と話さず、要点をまとめて簡潔に話すようにしましょう。
積もる話はいろいろとあるかと思いますが、あくまでも業務中であることを忘れてはなりません。
転職先の企業名を伝えるのは避けましょう。
信頼できる人に内々に話すのはOKですが、個人情報を大々的に公表する必要はありません。
メールで退職の挨拶をする際は、相手の状況がつかめないからこそ気を配るべきポイントがあります。
以下の3点に注意しましょう。
メールを送るタイミングをあらかじめ把握しておくようにしましょう。早すぎても遅すぎても相手に迷惑をかけてしまいます。
直属の上司と相談しておくとよいでしょう。
ビジネスメールの基本を押さえてメールすることは退職の挨拶の場合でも大前提となります。
メールタイトルは一目で内容が退職の挨拶だとわかるように記載しましょう。
メールの宛先は、一斉送信の際には自分のメールアドレスをTOに、各送信先をBCCに設定し、メールアドレスが開示されない配慮をするのがマナーです。
取引先やクライアントへの退職挨拶の際には、後任者の情報を必ず伝えます。
対面で挨拶する場合は後任者に同行してもらい、顔合わせをしておきましょう。
メールの場合は、後任者の氏名、所属、メールアドレス、電話番号など最低限の情報を記載しましょう。
手紙にも手紙ならではのマナーがあります。以下の2点を注意しましょう。
「拝啓」で始めて「敬具」で締める 手紙での退職の挨拶は、「拝啓」で書き始め「敬具」で書き終えましょう。
これらの言葉には「謹んで申し上げます」という意味があり、セットで使用する言葉です。
拝啓の後に続き、時候の挨拶を入れるようにしましょう。四季がある日本ならではのならわしです。
月や季節によって相応しい挨拶が異なるため、あらかじめ調べておきましょう。
ここからは、実際に退職の挨拶で使える例文をシーンごとに紹介します。
以下を基本形とし、あなたの状況に応じてアレンジしてください。
スピーチの場合は、いざその場に立ったとたんに緊張して「頭が真っ白...」ということにならないよう、あらかじめ伝える内容を考えておきましょう。
一語一句台本を作る必要はありませんが、必要な内容を伝えきれるよう、ある程度の大枠は作っておきましょう。また、全体の場で自分の言葉を伝えられるラストチャンスなので、好印象を与えられるスピーチを意識しましょう。
例文1 「皆様お忙しい中、このようなお時間を頂戴し誠にありがとうございます。
突然のご報告となりますが、この度、一身上の都合により本日付で退職することになりました。
新卒で入社いたしましたが、今の私があるのはこの会社と皆様のおかげです。敬語の使い方、コピーの取りかたすらわからず、学生気分の抜けない私に、皆様は根気強く指導してくださいました。
ちょうど昨年の今頃は、入社以来最大の壁にぶつかり落ち込む日々が続いていましたが、ランチに誘ってくださったり、ご自身の新卒時代のエピソードを話してくださったりして元気づけていただいたことで、私は立ち直れました。
今まで皆様がやさしく、そしてときには厳しく私に寄り添ってくださったことで、今日までこの会社で仕事を続けることができました。
私は今日でこの会社を去りますが、皆様に教えていただいたことを節目節目で思い出すことで、どのような困難にも立ち向かっていけると思っています。
短い間でしたが、本当にお世話になりました。
皆さまのご活躍とご健康を、心よりお祈りしております。」
例文2 「午前中のお忙しい時間帯にお時間をいただきまして誠にありがとうございます。
私事ではございますが、この度夫の海外転勤についていく決心をし、本日付で退職することとなりました。
私自身、想定外の出来事であり、戸惑いと名残惜しさはありますが、今後は数年間拠点を海外に移します。
先月からプロジェクトが始まったばかりのこのタイミングでの退職となり、皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。
まだまだ皆様と一緒にチャレンジしたいことがありましたが、ここでの学びを糧に海外生活を乗り越えて参ります。
今までさまざまなご指導をいただいたこと、あらためて御礼申し上げます。
短い間ではございましたが、誠にありがとうございました。」
本来は対面で退職の挨拶をするのが望ましいのですが、リモートワークやスケジュールの都合でなかなか難しい場合も考えられます。
また、関係者が多い場合は物理的に一人ひとりに会うのは難しいため、メールでの挨拶でもやむを得ないでしょう。
ただし、メールのみの挨拶によい印象を抱かない人がいるのも事実です。
相手との関係性によってはメールと併せて対面や電話での挨拶も検討しましょう。
例文1:社内(複数へ一斉送信)
件名:退職のご挨拶【名前】
関係各位
お疲れ様です。
○○部の○○です。
突然のご報告となりますが、
一身上の都合により、本日をもちまして退職することとなりました。
本来であれば直接お会いしてご挨拶すべきところ、
リモートワークの関係で実現が難しく申し訳ございません。
2年前の入社以来、皆様には大変お世話になりました。
至らぬ点も多くご迷惑をおかけしておりましたが、その度に皆様にご指導やフォローをいただき、多くの学びと成長を得られました。
転職先でもこの会社での学びを生かしていきたいと思います。
明日以降の連絡先は、以下の通りです。
メールアドレス:×××@××.××
携帯電話:090-×××-××××
最後となりますが、今後の○○社のご発展と皆様のご活躍を心よりお祈りいたします。
今まで誠にありがとうございました。
例文2:親しい人・直属の上司
件名:退職のご挨拶【名前】
○○部
○○様
お疲れ様です。
○○部の○○です。
突然のご報告となりますが、
一身上の都合により、本日をもちまして退職することとなりました。
本来であれば直接お会いしてご挨拶すべきところ、
リモートワークの関係で実現が難しく申し訳ございません。
入社以来、○○さんには多くのご指導いただき、数え切れないほど多くの学びと発見の機会をいただきました。
昨年の春、営業で思うような成績が出ない私に何日もつきっきりでご指導いただいたことは、今でも鮮明に思い出されます。
あのご指導があったからこそ今の私がいるのだと実感しております。
諦めずに向き合ってくださった○○さんには、感謝の気持ちしかありません。
今後も○○さんからいただいた学びを生かし、さらなる成長を目指して精進して参ります。
明日以降の連絡先は、以下となります。
今後ともよろしくお願いいたします。
メールアドレス:××××@××.××
携帯電話:090-×××-××××
最後となりますが、○○さんの益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
今まで大変お世話になり、誠にありがとうございました。
例文3:社外(取引先)
件名:退職のご挨拶【株式会社○○ ○○】
○○株式会社 ○○部
○○ ○○様
平素より大変お世話になっております。
株式会社○○の○○でございます。
突然のご報告となり大変恐縮ですが、
○月○日をもちまして○○を退職することとなりましたのでご報告いたします。
○○様には私が新人時代からお付き合いさせていただき、多大なるご協力をいただいて参りました。
短い間ではございましたが、誠にありがとうございました。
後任者は以下の者になります。
引き継ぎはすべて完了しておりますので、後日あらためて○○よりご連絡させていただきます。
後任者名:○○部 ○○ ○○
メールアドレス:××××@××.××
携帯電話:090-×××-××××
本来であれば後任者とともにご挨拶に伺うべきところでございますが
新型コロナウィルスの感染拡大を考慮し、メールでのご挨拶となりますことお詫び申し上げます。
今後とも弊社と変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。
また私個人につきましても、今後また何かのご縁でお世話になる機会があるかもしれませんが、その際はぜひよろしくお願いいたします。
末筆ではございますが、貴社のご発展と○○様のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
退職するあなたと、この先も同じ職場で働き続ける上司や同僚、その双方とが気持ちよく退職日を迎えられるよう、責任ある行動を心がける必要があります。
あなたが会社を去っても、上司や同僚は引き続き会社に残ります。
取引先もあなたの会社とビジネスを継続していきます。ですので、会社の不満を社内の人や取引先に漏らすことはやめましょう。
あなたが会社の不満を漏らすことは、相手に嫌な思いをさせるだけでなく、あなたに対する信頼も落とすことにもなりかねません。
自分が使用したデスク回りは、あなたが退職した後は別の社員が使用する場所です。
不要なものを捨てたり私物を引き取ったりして掃除や整理をしておきましょう。
これから使用する人が気持ちよく過ごせるよう、今までの感謝の気持ちを込めてしっかりと片付けましょう。
引き継ぎは抜け漏れなくしっかりとやりきりましょう。
退職日が決定した段階から逆算して引き継ぎスケジュールを作成しておくと安心です。
その際には、あなたの都合だけでなく後任者の都合も踏まえて作成するようにしましょう。
退職の挨拶は、あなた自身のけじめで、あなたの後任が困らないよう、環境を整えましょう。
自分が退職した後に残る人達に迷惑がかからないように円満退職しましょう。