残業時間とは?また上限は?

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就業規則に定められている就業時間を過ぎても、クライアントとのやり取りや終わらせなくてはいけない仕事があれば残業をするという方も多いでしょう。

残業と一言で言っても実はいろいろな定義があるのをご存じでしょうか。

 

労働基準法(※)第32条では、1日8時間かつ1週間40時間を上限に「法定労働時間」が定められています。 「法定労働時間」は、労働者が不当に長時間労働を強要されないためのルールです。この「法定労働時間」を超えて行われた残業のことを「法定時間外労働」といいます。

会社は「法定労働時間」の範囲内でその会社の就業時間を自由に定めることができ、就業規則雇用契約書に記載されている就業時間がその会社の「所定労働時間」となります。

「所定労働時間」が7時間の会社で1時間残業した場合、その残業時間は「法定労働時間」である8時間を超えないので「法内残業」と呼ばれます。

厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」によると日本の「所定外労働時間」は、平均すると月間約10時間程度とされていますが、実際はそれ以上の残業が行われているのではないかと懸念されています。

(※労働基準法は、労働基準(労働条件に関する最低基準)を定める日本の法律。日本国憲法第27条第2項の規定(「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」)等に基づき、1947年(昭和22年)に制定された。

労働組合法、労働関係調整法と合わせて労働三法と呼ばれる)

法定時間外労働を行った場合、会社は法定時間内労働の時より25%割増された賃金を労働者に支払わなくてはいけません。

法定時間外労働の残業代の計算方法は下記の通りです。給料計算をする時に参考としてください。

 

・1ヵ月平均所定労働時間を算出 (年間所定労働日数×所定労働時間)÷12ヵ月=1ヵ月平均所定労働時間

・1時間あたりの賃金(時給)を算出 月給(諸手当除く)÷1ヵ月平均所定労働時間=1時間あたりの賃金(時給)

・残業代を算出 1時間あたりの賃金(時給)×1.25(割増率)×法定時間外労働をした時間=残業代 なお、休憩時間や遅刻・早退等で勤務していない時間、有給休暇を取得した日は実働時間に含まれません。また、法定内残業の計算方法については会社の規定によって異なるので就業規則を確認してください。

 

.残業の時間帯や休日出勤の場合は賃金の割増率が上がる 法定時間外労働においては25%割増しの賃金が支払われますが、他にも条件によって割増される賃金が変わってきます。下記の表をご覧ください。

残業の種類    賃金割増率    説明・注意点 法定時間内労働(法内残業)    0%    会社の規定によって異なる。 法定時間外労働    25%    総労働時間1日8時間を超えた残業の場合は25%割増しされた賃金が支払われる。

法定時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)    50%    1ヵ月の残業が60時間を超えた場合は50%割増しされた賃金が支払われる。しかし代替休暇を取得した場合は20%割増しとなる。

深夜労働    25%    深夜労働 25% 午後10時から午前5時までの労働時間には25%割増しされた賃金が支払われる。

休日労働    35%    法定休日に労働した場合は35%割増しされた賃金が支払われる。

法定時間外労働+深夜労働    50%    総労働時間1日8時間を超えた労働(25%割増し)が午後10時以降にも続いた場合は深夜労働時間分としてさらに25%の割増しが加算される。

法定時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)+深夜労働    75%    1ヵ月の残業が60時間を超えた労働(50%割増し)が午後10時以降に行われた場合は深夜労働時間分としてさらに25%の割増しが加算される。

休日労働+深夜労働    60%    法定休日の労働(35%割増し)が午後10時以降にも続いた場合は深夜労働時間分としてさらに25%の割増しが加算される。

休日出勤した場合は出勤した日が「法定休日」か「法定外休日」によって計算が異なってきます。

「法定休日」とは労働基準法が定める週1日または4週間に4日以上の法律上の休日のことで、この場合は休日労働として35%割増された賃金が支払われます。 一方「法定外休日」とは法定休日にプラスして会社が定めた休日になります。

「法定外休日」の労働については、法律上の規制がなく、「法定休日」「法定外休日」がいつに該当するかは、会社の就業規則によって異なります。 たとえ休日に仕事をしたとしても、それが法定外休日と判断されると賃金25%割増の法定時間外労働として扱われるため注意が必要です。

 

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36協定(サブロク協定)で決められている時間外労働の基準 36協定(サブロク協定)は、正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に該当することから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。

業務の繁忙期や緊急対応などによって、法定労働時間を超えた労働や法定休日に労働する場合も考えられるため、あらかじめ企業(使用者)と労働者(労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者)が書面で36協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出を行います。 これによって、法定労働時間を超える残業が認められるようになるため、36協定の届出をせずに時間外労働をさせることは労働基準法違反となります。

なお、36協定には下記のように延長時間の限度が定められています。

 

・【延長時間の限度】 期間    一般労働者    対象期間が3ヵ月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者 1週間    15時間    14時間 2週間    27時間    25時間 4週間    43時間    40時間 1ヵ月    45時間    42時間 2ヵ月    81時間    75時間 3ヵ月    120時間    110時間 1年間    360時間    320時間36協定の限度時間を超えてさらに時間延長しなければならない特別の事情が発生した場合への対応として「特別条項付き協定」があります。 ただし、これはあくまでも臨時的(一時的、突発的)な場合に認められるものであり、限度時間を延長できるのは、1年間で6ヵ月までと決められています。

「特別条項付き協定」を結ぶ場合は下記の要件を満たさなければなりません。

・原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること

・限度時間を超えて時間外労働を行わなくてはいけない特別な事情をできるだけ具体的に定めること

・延長期間を延長する場合の、労働者と使用者との間の手続きについて定めること

・限度時間を超える一定の時間を定めること

・限度時間を超えることができる回数を定めること

・限度時間を超えて労働させる一定期間の割増賃金率を定めること。

36協定(サブロク協定)による時間外上限が適用されない事業もある 下記に該当する事業や業務においては36協定による時間外上限が適用されません。ただし、政府が進めている働き方改革によって変更される可能性がありますので、今後の動向を見ていく必要があります。

・ 工作物の建設等の事業

・ 自動車の運転の業務

・ 新技術、新商品等の研究開発の業務

 

・「100時間」とは 36協定によって「原則月45時間、年360時間まで」の残業が認められ、さらに「特別条項付き協定」を追加することにより、残業時間には上限がなくなり青天井で時間外労働を許す状態となっていました。

こういった悪しき慣行が長時間労働の温床となっているとして、政府は2017年3月28日「働き方改革実行計画」にて、残業時間の上限規制を設けることを決定。

2018年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布されました。

その内容は、36協定自体には変更はなく、「特別条項付き協定」において「年間720時間」の上限を設けるものとなりました。

新しく設定された「年間720時間」の枠内で、2~6ヵ月の平均では「80時間以内」、1ヵ月では「100時間未満」を基準に時間外労働をできるようにしました。 ただし、月45時間を超える残業は現在と同じく年間で6ヵ月までです。

・「100時間」の理由 「80時間」「100時間」という数字は過労死の認定基準を参考にして定められました。

過労死の原因の多くが脳や心臓疾患と言われており、発症前の1ヵ月に100時間を超える残業をした場合、または2~6ヵ月間につき80時間を超える時間外労働があった場合は、これらの疾患との関連性が強まるとされているからです。

1ヵ月に20日間出勤するとした場合、2~6ヵ月間につき80時間を超える時間外労働だと1日4時間以上の残業を、1ヵ月に100時間を超える時間外労働だと1日5時間以上の残業を行っていることになります。 こういった長時間労働によって、脳や心臓など身体的な病気やストレスによる精神的なダメージで、うつ病などの心の病を発症してしまう人や、さらには自殺に追い込まれてしまう人がいることが現在問題になっています。

そのような人達を減らすために残業時間に制限を設けることになったのです。

 

 

極端に長時間残業で長時間労働していると、精神的にも身体的にもダメージを受けます。

それが問題になって国は労働基準法36条の改正していっています。

残業が多いと思ったら上司に業務を調整してもらうなど、自分の身体を守りつつ、業務をこなしていきましょう。